嚥下(えんげ)とは
「嚥下(えんげ)」という言葉に、どれほどの人がなじみを持っているでしょうか。
私自身、この言葉の意味を意識するようになったのは、ごく最近のことです。
身近な人が食事をすることに困難を感じ始め、「飲み込む」という何気ない行為が、こんなにも繊細で、そして重要なのだと知りました。
食べることは、生きること。
それは誰もが口にする言葉かもしれませんが、日々の暮らしの中で、当たり前のように過ごしているとつい忘れてしまいます。
嚥下障害と向き合うことは、食べることの意味を改めて考える時間でもあります。
私の家族の一人が、病気をきっかけに嚥下に不安を抱えるようになりました。
はじめは、「なんとなく飲み込みづらい」と言っていた程度だったのですが、次第にむせることが増え、食事の時間が長くなり、本人も家族も少しずつ不安を感じるようになりました。
嚥下に問題が起こると、誤嚥性肺炎などのリスクも高まります。
私は初めて、嚥下というものに真剣に向き合うことになりました。これからどうしたらいいのだろうという不安が入り混じった感情になりました。
今からできることを始めよう
同時に「今からできることを始めよう」と前向きに考えることもできました。
毎日の食事をどう工夫するか、どんな姿勢で食べるのがよいのか、食べる速度や一口の量、口の体操やリハビリの方法など、生活の中でできることがたくさんあります。
私たちはまず、食事の内容を見直すことから始めました。
やわらかくて飲み込みやすい食材を選び、食べ物の大きさや形状、味付けにも注意を払うようになりました。
誤嚥のリスクがある場合は、「とろみ」をつけることも効果的だと知り、スープやお茶などにもとろみ剤を使うようにしました。
嚥下障害に対しては、「年齢のせいだから仕方がない」と諦めてしまいがちです。
でも、私はこの経験を通して、予防や改善の余地があること、そして何より本人の「食べたい」「美味しいと感じたい」という気持ちがとても大切だということを学びました。
嚥下と向き合うということは、単に食事の工夫をするだけではありません。
家族の間でのコミュニケーションや、安心して食卓を囲める環境づくり、そして時には専門職の方にサポートを求めることも含まれます。
嚥下はその人らしく生きるための力です
「嚥下は、ただ飲み込む機能ではありません。その人らしく生きるための力です」
この言葉が、今も私の心に残っています。
これから先、嚥下障害と完全に無縁でいられるわけではありません。
もしかしたら、症状が進行することもあるかもしれません。
でも、今できることに目を向けて、少しでも快適に、楽しく、食べることを大切にしていきたいと思っています。
そしてこのブログを通して、同じように嚥下に不安を感じている方、家族としてどう支えていいか悩んでいる方に、少しでも安心を届けられたら嬉しいです。
小さな一歩かもしれませんが、「向き合う」ことが、きっと未来を変えていく。
嚥下と、そしてその人の「食べる喜び」と、これからも向き合っていきます。